真の美と健康
~エンジンはいつもフル回転、そこにギアが入った!~
株式会社マーキュリー 代表取締役 木下 まき 氏(東支部)
『美と健康』というすばらしい仕事を組織で広げていきたいと考えた木下まきさんは、困難に遭っても同友会の学びを実践していくのでした。
(株)マーキュリー設立
今回取材班が向かったのは、福岡市東区の(株)マーキュリーです。社長の木下まきさんが笑顔で出迎えてくれました。事業内容は、エステサロン、美容機材卸業、スクールコンサルの三本柱です。
木下さんは、美容系の会社に勤め、『美と健康』に貢献することの喜びを感じていました。早くに結婚し二人の子どもをもうけ、子育てにめどが立つとすぐ仕事に復帰しました。2000年にはエステティシャンとして(有)サロンド・グラースを仲間と共同で立ち上げました。
エステティシャンは個人で活動する人が多いのですが、『美と健康のトータルケアプロデュース』というテーマを自分が主導権を握って組織的に広めたいと考えていました。2006年に自らが代表取締役となる(株)マーキュリーを設立し、事務所を福岡市東区奈多に置きました。
社名はローマ神話の富と幸運の神・商業の守護神マーキュリーに由来するかと思いきや、会社に関わるスタッフと子どもたちのイニシャルをつなぎ合わせたもので、関わる人たちが幸せになりますようにという気持ちを込めています。
2007年にはシューフィッターの資格を取得、インソール及び整形靴も始めています。
業界の特徴
エステティック業は、人の皮膚を清潔にし、若々しく美化し体形を整え、または体重を減ずるための施術を行うことと定義されています。エステティシャンになるには、国家資格はないものの、カウンセリングや施術が主な仕事で養成する施設や専門学校で皮膚の知識、化粧品や美容機器の取り扱いなどの知識・技術を習得することが求められます。 「肌のトラブルはその日の気分、精神的な原因が大きいので、聞き役に徹してリラックスしてお客様に信頼していただきストレスを解消することから始まります」と木下さんは語ります。
「経営指針書って何?」
木下さんは「一に仕事、二に仕事……」と、とにかく懸命に働きました。本人曰く「ノリで(必死に)仕事していましたね」。その頃、知り合いの三好美貴さん(みよし税理士行政書士事務所/東支部所属)から「経営の勉強ができるよ」と同友会に誘われました。さらに「同友会では経営指針書を作成するのよ」と言われ「何それ?興味ある!」とすぐに『あすなろ塾(経営理念作成)』そして『経営指針作成セミナー』に参加しました。いつも頭の中で思っていたことを成文化することで、目指すものがクリアになりました。
策定した経営理念は次の通りです。
真の美と健康
真の心の笑顔
真の地域密着型
それまで根拠のない自信で働いていたエンジン全開の木下さんにとっては、経営指針書ができたことで確信というギアが入り『マーキュリー』は動き始めたのでした。
プレーヤーからマネージャーへ
同友会で学びを深めていくにつれ、組織経営していくために自らはプレーヤーからマネージャーになる必要があると気づきました。「とても寂しい気持ちになりました。現場が大好きなので自分の中で葛藤もありました」と振り返ります。お客様に喜んでいただけることを目指すならと決断します。
「エステ業界は10年後に、あるんだろうかと思うことがあったんです」。 そう考える理由は『コロナ禍の経営危機』だったのです。
大きな困難が立ちはだかる
2019年12月、東区千早に2号店を出すため、店舗を確保しスタッフの研修を進めていました。しかし新型コロナウイルス感染症が広がり始め、日本における水際対策の失敗が伝えられています。やがて20年4月には緊急事態宣言が発出され、対面型・接触型の仕事はできず休業を余儀なくされ、出店も断念せざるを得ませんでした。「一番ショックだったのは、当時サロンで観ていたテレビで、行ってはいけない場所としてエステサロンと言われたことです」と、今でも悔しさを忘れません。「国は私たちを守ってはくれない」と途方に暮れる日々でした。閉店中は「毎日、会社の資金繰りについて考えていました」と振り返ります。
東支部の仲間からは、眞鍋志郎さん((株)サンビニール)は店舗の受付に使用する大判のビニールシートの提供、西藤興治さん(エスエス産業(株))からはフェイスシールド、前田芳乃さん((有)みこと調剤薬局)は抗体検査キットや消毒のノウハウなど様々な協力をしてもらいました。「ほんとに仲間がいるっていいことですね」と実感しています。
コロナ禍で学んだこと
コロナ禍で木下さんは経営指針書を何度も読み返しました。同友会で学んだ戦略の実践をしました。化粧品や美容機器の販売を美容室や理容室向け、さらには地元で知名度のある商社・企業にも広げていきました。また独立や副業を考えている人に技術指導(スクールコンサル)をしました。こうしてハードウェア、ソフトウェア両面での活動をしていきました。今後は海外にも販路を求めていくことを視野に入れています。
「コロナの波が静まり、店舗も再開して改めて対面できることの大切さを実感します」。
ネットや物流の普及で、化粧品などは対面で購入しなくなっています。「果たしてそれで本当の美が得られるのでしょうか。スタッフ一丸となって、それまでにも増して真剣にお客様の話を聞き、悩みに寄り添うようにしています」。単に外面だけでなく、内面の心からの美を提供したいという気持ちが強くなりました。
地域とのかかわりも大切にしています。地域のお祭りがあれば協力して参加しています。社会人講話での報告や中学生の職場体験の受け入れなど積極的に取り組んでいます。
「このすばらしい仕事を将来に残し、業界の地位向上に少しでも寄与したいと考えています」。
女全交で一役
福岡同友会は2023年3月に創立60周年を迎えました。6月22日から23日に北九州市で第26回女性経営者全国交流会in 福岡を開催します。木下さんも運営スタッフとして汗を流しています。
「福岡はアジアの玄関口です。ビジネスチャンスも多く、起業する人も多い土地柄です。女性もチャンスがいっぱいあると思います。また男性経営者も今回の交流会を通して多くの学びがあると確信しています。さらに交流会に参加するだけでなく、運営に携わることでさらに学びが深まると確信し、女性経営者を巻き込んでいます。
ちなみに、木下さんは第6分科会の室長を担当します。「JR九州の鐘ケ江理恵さん(九州旅客鉄道株式会社 博多駅長)の報告を聞いて学びを深めます」とPRにも余念がありませんでした。
必要とされる会社
取材の最後に木下さんが考える『自立型企業』についてお伺いしました。「社員が一丸となって前進していく会社。そして世の中・地域から必要とされる企業。社員を幸せにしていく会社ではないでしょうか」と話してくれました。「コロナ禍では、どうなるかと思いました。ただがむしゃらに働くのではなく、計画的に、数値化して科学的に経営をしていかなければいけないですね。経営者は覚悟が必要です。同友会に入ったから今があるとつくづく実感しています」と締めてくれました。
取材協力ありがとうございます。
株式会社マーキュリー
創業 | 1997年9月 |
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住所 | 福岡市東区奈多3-1-14 |
電話 | 092-608-7727 |
従業員数 | 6名(うちパート3名) |
URL | https://www.mercury.fukuoka.jp |
事業概要 | エイジングケアを テーマに美と健康を 提供しています。 |
取 材 広報部
文章担当 菅原 弘(東支部)
写 真 富谷正弘(玄海支部)