お客様の期待値を高めるために
〜新社屋が物語ること〜
株式会社 リビングデザイン
代表取締役 森 美朗 氏 <飯塚支部>
お客様の声に耳を傾けプロとしての提案をしていく(株)リビングデザインの森美朗さん。計画より早めに自社社屋を建設し、積極的に戦略展開しています。
ワクワクをカタチに
今回の取材は、飯塚市の国道200号沿いにひと際シックな新社屋を構えた㈱リビングデザインをお訪ねしました。代表取締役の森美朗さんは「住宅・店舗のリノベーションをしています」と話し始めてくれました。
一般に『リフォーム』とは、老朽化した建物を新築に戻す工事を指します。いわゆる「住む人の困った」の解決です。一方、『リノベーション』は住まいの性能を向上させ価値を高める工事を指します。いただいた名刺には『ワクワクをカタチに』と謳っています。
創業までの経緯
森さんの父親は訪問販売など営業職をしており、30代の時に『森住建』という屋号で個人事業者としてリフォーム業を営んでいました(現在でも現役)。
森さんは飯塚市に生まれます。学校を卒業して建築会社に就職します。22歳の時、仲間に誘われて広告会社に転職しました。フリーマガジンHen(ヘン)の立ち上げに携わります。『筑豊に変化を起こしたい』を理念に活動してきましたが、3年ほどして会社を辞めてしまいました。
父親の『森住建』を手伝いながら就職先を探そうと考えました。しかし『リフォーム』という仕事がお客様に大変喜ばれることで、やりがいを感じるようになっていきました。30歳の時、10坪ほどのテナントを借りて『リビングデザイン福岡』を創業させます。「この頃はテリトリーを福岡県全域と考えていたので福岡と付けました」。やがて筑豊に営業エリアを絞って㈱リビングデザインを設立させました。33歳の時です。
自社施工比率を高くする
創業当時はほぼ100%が下請けでした。元請け業者や不動産会社にお中元・お歳暮を届けて、協力業者会に出席していれば仕事がもらえました。「自社で仕事を見つけることもなく楽だなと思いました」。しかし元請け会社の倒産で引っ掛かり(負債)が出たり、不動産会社の担当が変わると仕事が来なくなったりしました。これでは安定した売上げが見込めないと危機感を覚えるようになりました。
また、かつて協力をお願いした大工さんがお客様に対し「それはできない」などと平気で口にしたり、現場でタバコの吸い殻を捨てたりするなど不安を感じ始めました。
違う業者でしたが、孫請けの職人がお客様にはロクな挨拶もせず下請け業者(その人にとっては仕事をくれる人)には最敬礼していたのを目のあたりにしました。「それは違うだろう」と心の中でツッコんでいました。
「そこで元請け体制にシフトし、さらに自社施工の比率を高くしていきました」。
建築は大工工事・水道設備工事・電気工事が大きなウェイトを占めます。現在社員は4名で、そのうち1名が総務担当の女性で、3名がオールラウンドプレーヤーです。
そのメリットとしてお客様の意向に沿った、またはそれ以上の仕事ができるということです。デメリットとして、同時に多くの現場を抱えられないことを挙げました。自社施工なら当然責任感も強くなります。クレームが少ないのも特長です。
同友会との出会い
森さんが広告会社に勤めていた頃は、異業種の方との交流が多かったと言います。それが創業し建築業界に入ると同業者ばかりとの付き合いとなりました。これでは情報収集や人脈作りができないと物足りなさを感じていました。すると「同友会というのがあるよ」と聞いて、その門を叩くことにしました。
同友会に入会してすぐに『あすなろ塾』と『経営指針作成セミナー』を受講しました。
策定した経営理念は次の通りです。
『リノベーションを通して関わるすべての人を豊かに』
すべての人とは、お客様・取引業者・社員とその家族を指しています。
新社屋建設
10年ビジョンには『自社の社屋を建てる』とありました。計画より前倒しして建てています。森さんはこれにはかなりの思い入れがありました。
「飯塚でリノベーションと言えば『リビングデザイン』と言われるようになりたいと考えています。それにはまず自社で社屋を構えることでブランディング(信頼の向上)になると考えました。立地も目立つ国道沿いにしました。
元請けとなるためにはお客様を自社で探さなければなりません。同社では、現在飛び込み営業はしていません。口コミ、リピーターなどとともに、ホームページを利用しています。「ネットによるお客様の評価というのが重要な決め手になっています」。
実はお客様はリノベーションを『どこに頼むか』『いくらかかるか』を知りたがっています。またお客様との関係は、工事をして終わりではありません。そこが長い付き合いのスタートです。地元に会社を構え看板を揚げることは信頼の証です」。ブランド戦略の一環として、ロゴマークを作り、コーポレーションカラーは元気をイメージするオレンジとしました。営業車やユニフォームも統一性を図りました。
社内はフロアや壁、住宅機器が展示場の役割をしていました。「住宅機器のメーカーショールームは陳列となっていますが、工務店として建材などのデザイン・柄を見せるだけでなく床と壁の収まりやコーディネート、出隅・入り隅の具合、窓の採光や枠を実際に見て触れて感じてもらいたいと思ってつくりました」。
そしてもう一つの思惑があります。「これから新卒採用を始めようと考えています。技術はともかく人材育成を一から始めるためにも新卒採用が重要だと同友会で学びました。そして社内の整備が必要です。就業規則の見直し、人事評価制度の導入などやるべきことが出てきました」と話します。
お客様の期待値を上げる
「リノベーションというのは、まずはカタチが見えないものに対して、お客様が期待を寄せてお金を払っていただく仕事です。その期待値を上げなければなりません。私どもは今まで積み重ねてきた実績、経験、お客様の声を参考にしてプロとしての最高の提案を心掛けています」。
リノベーションをしていただいたお客様には、アンケートを取っています。プリペイドカードを差し上げている効果もあり回収率がとてもよく、今後の自社の仕事に役立っていると言います。
また、年末にはご挨拶として、予定を記入できる大きめの壁掛けカレンダーを持参し定期訪問しています。
売上げを他社に依存しない会社
飯塚本町商店街の空き店舗を一棟丸ごと借りて、区画分けして、カフェ等に転貸(サブリース)しました。その際に集まったメンバーで会社をつくりました。その名も株式会社スキマニヤモリ。商店街の空き店舗をリノベーションして、商店会費や改修費を合わせていただくという仕組みで地域貢献の活動をしています。
取材の最後に森さんの考える自立型企業についてお伺いしました。「売上げを他社に依存しない会社でしょうか。お客様と直接お付き合いし、工事は自社で育てた職人で行うという内製化を高めていく会社。会社組織体制としては、社長がいなくても稼働していく会社でしょうか。これは今から体制を整えていきたいですね。どの業界でも職人不足が叫ばれています。いずれ職人育成学校のようなものがつくれたらいいなと夢を抱いています」と話してくれました。
取材協力ありがとうございます。
創業 | 2015年 |
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住所 | 飯塚市太郎丸779 -1 |
電話 | 0948-21-5563 |
従業員数 | 2名 |
事業概要 | 住宅のリフォーム・リノベーションを行っております。 |
URL | https://living-d-f.com |
取材/広報部
文章/菅原 弘(東支部)
写真/富谷正弘(玄海支部)