希望の光を

〜夢を持ち、挑戦し続ける〜

株式会社 レイオブホープ 代表取締役 石内 雅盛 氏

株式会社 レイオブホープ
代表取締役 石内 雅盛 氏 <筑紫支部>

藁にもすがる思いで『福祉業界』に飛び込んだ石内雅盛さん。支部長経験で組織運営に関する様々なものが見えてきたのでした。

突然の解散通告

 今回の取材は、筑紫野市で福祉の仕事に携わる(株)レイオブホープの石内雅盛さんをお訪ねしました。まず、会社設立までの経緯をお伺いしました。

 昭和30年代、大手飲料メーカーM社のグループ会社の九州生産拠点が筑紫野市にありました。祖父の傳(でん)太郎(たろう)さんは、その子会社D社で物流業を営んでいました。面倒見のいい人で精神障がいを持つ人を雇用していました。父親の(でん)(しち)さんもそのあとを引き継ぎました。

 石内雅盛さんは筑紫野市で石内家の次男として生まれます。高校時代は野球部に属し、2年生の時に春の甲子園に出ています。「将来はプロ野球選手か、祖父や父みたいに会社の社長になりたいと考えていました」。実際には短大卒業後、流通会社に就職し、長男も独自に会社に就職していました。父親から「帰って来い」の一言で、後継者として入社したのでした。

 しかし平成23年2月、突然親会社が生産拠点を熊本工場と統合することを発表し、筑紫野市の会社は1年後に解散することを通告してきました。

 「寝耳に水でした。当時結婚して家を建てたばかりでした。親会社の就職支援・斡旋で十数名いた社員は新しい就職先に就くことができましたが、私と6人の障がいを抱えた人たちが取り残された状態になってしまいました」と当時を振り返ります。

新会社設立

 障がいを持つ社員が通っている病院へ、事情報告に訪ねました。そこで「石内さん、就業支援事業A型という制度があるよ」という話を聞きました。障がい者総合支援法から定められた単位に従って利用サービスの報酬が受け取れるのです。石内さんは藁にもすがる思いで、その話に飛びつきました。福祉業界のことなど何も知らない身でしたが、残された時間、必死に勉強し資格を取りに行きました。

 「自分で進んで入った業界ではないんです。切羽詰まった状況だったんです」。

 平成24年2月、(株)レイオブポープは立ち上がりました。「弟が介護の資格を取得しており、何かと役に立つだろうと説得して入社してもらいました」。

 社名は『希望の光』という意味です。社会や障がいを持つ方々に希望の光を……との願いを込めています。「今になって考えると、自分自身も職がなくなり路頭に迷いそうになっていたところでした。そこへ一条の光が差し込んだのかもしれません」と苦笑します。石内さんは、利用者を募ることに尽力しました。苦労はしましたが、3年ほどで軌道に乗ってきました。

収益の柱を作る 

 石内さんは、さらに安定した会社経営を目指すため、清掃業を始めます。収益の柱の一部を障がいを持つ方に働いていただくという仕組みです。

 「当社では、利用契約と雇用契約があるんです」と説明してくれました。

 現在、障がいを持つ方は10名在籍しています。障がいには、知的・精神・身体などがあり、一人ひとりがどういう状況にあるのかを丁寧にヒアリングしていきます。情緒が安定せず急に出社して来ないこともあります。季節や薬などとの関係もあります。

 「それが病気なのだと理解しなければなりません」。

 「ここで作業・訓練して一人前になり他社に行って働く人もいれば、働くところがなく、うちで働くことを望む人もいます。業務はひとりのスタッフ(指導員)に2、3人でシフトを組んでいきます。スタッフは5名います。もう少し増えれば事業も拡大できると考えています」。

同友会との出会い

 創立するにあたり、手続きを司法書士の黒木文康さん(黒木文康司法書士事務所/筑紫支部)にお願いしました。その中で「障がい者の就労についての勉強会があるよ」と誘われました。黒木さん自身もメンバーです。参加してみると、同業者の会員さんがそれぞれの課題について学んでいました。ゲスト参加をしていましたが、やがてそれが同友会のバリアフリー委員会であることがわかりました。そして筑紫支部の例会に参加するようになりました。経営者が自社の経営課題に真剣に取り組む姿勢を見て、それまで目先のことばかりしか考えていない自分に気づき、入会を決めました。

 入会後『あすなろ塾』『経営指針作成セミナー』に参加しました。策定した経営理念は次の通りです。

『私たちは誰もが自立し、地域の中で幸せに暮らしていける社会の実現に貢献します』

弟の退社

 令和3年に入り順調に推移していた頃、福祉サービス担当の弟が退職を申し出てきました。「兄ちゃんとは、やってられない……兄ちゃんは怖い」。

 「弟とは方針を共有できていると思っていました」と石内さんは言います。しかし体育会系のノリで厳しくあたっていたのでした。実は母親にはいろいろ話をしていたことが後になってわかりました。さすがに石内さんもショックを受けました。「これは自分が悪い」と深く反省しきりです。

 そんな折り、同友会で支部長を受けてくれという話が舞い込んできました。一番厳しい状況だと断っていましたが、先輩支部長の樋口康治さん((株)アイル)から「俺もそうだった」の一言で受けることにしました。

笑顔がある会社

 弟がいなくなり、社内の改革に乗り出します。利用者の方の話を、これまで以上によく聞くことに徹しました。こちらから指示することは簡単ですが、あくまでも本人の自主性を重んじ、どうしたいのかを確認するようになりました。障がいを持った人たちの集まりなので、根気のいる仕事です。改善の階段を一歩ずつ上り始めました。障がいを持った人の話をよく聞くということは、スタッフにも共通する大事な姿勢だということに気づきました。

 やがて自社の課題が見えてくるようになりました。

 「笑顔が少ない」。

 そこで楽しいイベントを開催するようにしました。社内の壁にはお花見、BBQ、たこ焼き大会などの写真が貼られてあり、笑顔のあふれる情景でした。

 「私には夢ができてきました。別会社として清掃会社を作り、ここで一人前に働くようになった人を受入れたいんです」と石内さんが語ります。

筑紫支部2030年ビジョン

令和3〜4年度、筑紫支部長を務めました。課題としてここ数年会員が減少しています。支部運営も理念・ビジョン・方針・計画が必要と考え、10年を見越した『筑紫支部2030年ビジョン』を策定しました。

「よい経営者になるために」

「役員組織・増強」

「例会ブロック会づくり」

「会員交流・勉強会」

の4項目からできています。その理念は、平山芳光支部長((株)水城自動車)に受け継がれていきました。

 「役職、特に支部長を受けたくなるような支部活動にしていきたいです。こんな私ですが、支部長を経験して、本当にいろいろな学びがあり、経営に役立っています」。

 石内さん自身は、筑紫支部で新設した相談役に就き、ビジョン達成に助言をする立場になりました。

夢を持ち挑戦する社員

 取材の終わりに、石内さんの考える自立型企業についてお伺いしました。

 「仕事を通じて生きがいを感じることができる会社。経営理念を一人ひとりが共有して実現のために主体的に考えて行動する会社だと思います。そういう会社にすることが私の仕事ですね」。石内さんの何事にも挑んでいく気持ちを感じました。

 前述した経営理念の説明として、自立とは、「夢を持ち、挑戦し続ける」とありました。

 そこに希望の光が差してくることでしょう。

 取材協力ありがとうございます。

<株式会社レイオブホープ>

創業 2011年10月
住所 筑紫野市紫2-10-7
電話092-923-3732
従業員数16名(内パート・スタッフ6名)
事業概要 障害者自立支援法に基づく障害者福祉サービス。就労継続支援A型事業。

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