第1回経営実態調査報告書 (2024年7月~9月期)ダイジェスト「利益が上がりにくい厳しい経営環境の下、インフレへの転換期を機に競争力を高め、戦略的な価格転嫁を進めよう」
〔概況〕
今期の調査は、前回の景況調査(2024年4-6月期)に比べ、売上DI(前年同期比)は「3.6」へ-2.7ポイントとなり3期連続で下落。同じく、採算(経常利益)DI(前年同期比)も「-4.1」へ、-2.1ポイントの3期連続減となりました。自社業況判断DIも「-8.2」と-8.8ポイントで、3期連続の下落となり4期ぶりのマイナス域となりました。いずれのDIも改善の回答数が減少して「横ばい」を回答する企業数が増えたためであり、コロナ禍後の景況改善の勢いが弱まっている状況に警戒が必要です。これには仕入単価DIは「上昇」が224社を占める一方で、販売・客単価DIは「上昇」が145社にとどまり、価格転嫁が進んでいない現状が背景にあるとも推測されます。一方で、次期(2024年10-12月・前年同期比)見通しでは売上・利益・業況判断DIともに大幅プラスで明るい見通しの企業が多くなりました。
「経営上の問題点」では、1位「仕入単価の上昇・高止まり」で原材料等の価格値上げ、価格転嫁の問題が最大の課題となっています。また、2位「従業員の不足」、3位「人件費増加」、次いで「管理者(マネージャー)・幹部の人材不足」と、労務費の課題も含めて“人の問題”が大きな比重を占めました。
「経営上の力点・課題」は、1位「人材確保」や3位「社員教育」と人の問題を喫緊の課題として多く取り組まれ、2位には「経営者の姿勢の確立」、また「自社内・外部環境の状況把握・分析」や「経営指針の見直し」等も上位を占め、経営者自身の姿勢と社内見直しに力点を置いた企業が多くみられました。
今 期の経営実態調査分析会議においては、経営上の問題点として仕入価格や原材料費等の上昇が進み「利益が上がりにくい経営環境にある」と論議され、戦略的に価格転嫁を進める必要があること、また労務費上昇については外国人技能実習生も含めて急務な課題となっていると実情が共有されました。さらに、売上・利益の減少理由に営業力の弱体化が最も多く挙げられており、「定期的なコミュニケーションを通じて顧客のニーズを把握し、関係を強化することで受注が戻ってきた」事例が紹介され、「“営業力”を単なるモノ売りの販売活動に留まらせず、顧客との関係構築やニーズ把握の重要性を再認識させることで、競争力を高める必要がある」と提起されました。
※DI(ディフュージョン・インデックス):企業の業況感や設備、人手過不足などの各種判断を指数化したもので、景気局面などの全体的な変化の方向性や各経済部門への波及度合いを把握できる「拡散指数」です。
計算式(百分率表示)
DI = (プラスの構成要素の数(「よい」など)-マイナスの構成要素の数(「悪い」など)) / 構成要素の総数×100
〔特別調査 最低賃金改定に伴う影響調査〕
最賃上昇の対策は「業務の効率化」「経費等の削減」で社内努力による回答が目立つ
最賃改定に伴い、賃金を引き上げる企業が46.3%と半数を占める一方、「据え置く」企業も32.6%と3社に1社程度ありました。改定の影響予測は「影響は特にない」が最多168件である一方、「賃金上昇に伴う利益圧迫」が130件に上りました。その他の回答には「収入制限によるパート労働者の勤務時間の短縮」とあり、いわゆる「年収の壁」によるパート社員の勤務時間の影響も挙げられました。最賃上昇への対策は、「特に対策を講じない」との回答も多い(134件)一方で、「業務の効率化」が最多の149件、「経費等の削減」(80件)とあり、「価格の引き上げ」(118件)によらずに社内の企業努力で対応する企業も多く見られました。