2月17日「事業承継塾」に参加して
福友和支部 中野正志
事業承継塾第5講は西支部所属の有限会社日研会長の末竹哲氏による「私の事業承継」というテーマで報告いただきました。
末竹氏による報告は1989年にご自分が三代目の社長として事業を承継して、2021年には四代目社長にバトンタッチをされたという両方の立場の体験を語って頂くものでした。
1962年末竹氏の父親が個人事業主として空調ダクト清掃事業を開始されましたが、4大公害病が叫ばれ公害対策基本法が制定された時代でしたので、1967年から有限会社日研に組織変更して新規に環境計量証明事業を開始しました。ところが1978年に末竹氏の父親である初代社長は他界して二代目社長として叔父さんが受け継がれます。会社は赤字続きでしたが、銀行から中小企業診断士の紹介を受けた年は黒字を出すことができました。
銀行からの勧めもあり末竹さんが三代目社長となりますが、累積の負債を抱えての承継であったため負債の返済に追われ眠れない日々を過ごしたと当時を振り返ります。しかし、末竹氏はコツコツと返済をしながら、一方で会社の経営改善に取り組みます。就業規則の整備をして、1998年に中小企業家同友会に入会し、経営者としての学びを得ます。会社の質を高めるためエコステージ認証を取得してEMSを導入し、その他にもエコ事業所登録、子育て応援企業宣言、飲酒運転撲滅宣言企業登録、BCP認定取得、SDGs(福岡県)認証取得をします。事業も検査業務、清掃業務を充実させ、一時は物品販売まで手がけ、徐々に経営を好転させていかれました。
四代目の後継ぎを検討されたのは末竹氏が同友会の同友すばる委員会の委員長就任を受けてからでした。委員会の部会として「事業承継塾」があり体験者の報告や専門家の講義を受けながら自社の事業承継計画を考えられました。
候補者を三人選び各々の事情を考え、本人の意欲、実務能力、リーターシップ、顧客からの信頼等の基準から後継者を42歳の中堅社員に決め、後継者とのコミュニケーションをとりながら四代目社長の育成に努められ2021年にバトンタッチされました。
末竹氏が次期社長に伝えたのは①雇用を守りなさい②社員を教育しなさい③経営者の友を作りなさいということ。同友会での学びをそのまま引き継いでほしいと言われてたそうです。
今回の報告は、事業承継は襷の受け渡し、だからこそ会社の事業、社風、伝統を渡すのはもちろん負債のない状態で渡したいという末竹氏の熱い思いが伝ってくるものでした。
そのためには早めに事業承継を見据えて経営指針書を作成することが何よりも大切であることが分かりました。事業承継塾ではこのように経営指針書作成運動に事業承継計画まで含めることを推奨していくということです。こうした事業の持続性を高めていくことが各々の事業をより発展させ日本経済の発展にも繋がるものだと思いました。
体験報告をする(有)日研の末竹さん
熱心に報告を聞く参加のみなさん
参加者の声
※当日アンケートより抜粋
●厳しい経営環境での承継のご苦労が判りました。人柄が表れた承継の取り組み、「きれいに渡したい」に共感しました。
●事業承継に関する実体験を聞くことができ(どこがポイントになるか)確認できました。事業承継に今後自分が関わろうとした時にどういったことを把握(勉強)する必要があるかイメージできたので大変良かったです。
●末竹さんのご苦労を含め、受け渡しを覚悟を持って取り組まれたのだということがよく分かりました。私も後継者として会社をより良いものにできるよう精進して参ります。