2017年度中央支部8月例会報告 記録 いちご会計事務所 足立 知弘
8月の中央支部例会では、株式会社良久良久を経営されておられる、吉武鑑秦さんをお呼びして、例会報告をしていただきました。
報告の題名は、「カンと度胸、経験だけの経営でいいの?経営指針書が自分を変えて会社も変えた!~経営指針書作りと企業変革プログラムの実践例~」でした。
報告内容は経営指針書作りと作成後の運用がどうだったのか、また企業変革プログラムSTEP1を使われてどのように経営と経営指針書作りに活用しているかという話でした。
吉武さんは、久留米市にある陸上自衛隊幹部候補生学校等で売店を経営されています。会社は、個人事業の頃から数えて創業63年になります。
吉武さんの中小企業家同友会との出会いは、知り合いの紹介から経営指針書作成二泊三日セミナーへの参加を決めたことでした。
同友会入会以前は、経営に目標や理念といったものもなく、漠然とした経営をされていたそうです。
ある時、知り合いの紹介で出会った同友会の会員さんと話をしていると、その方から「今の漠然とした経営では、将来うまくいかなくなる。経営指針書を作ったほうがいい」との指摘を受け、経営指針書作りに関心を持つこととなり、作成してみることにしました。
二泊三日セミナーを受講し、何とか苦労の末に経営指針書を作成しましたが、そこから更に苦労の道のりだったようです。
社員の方たちに、経営指針書の内容を報告し、指針書の通りに目標を掲げて経営をしていくことを報告しましたが、社員の方たちの反応は冷たかったそうです。
それでも吉武さんは、くじけることなく経営指針書に掲げた目標実現に向かって、行動されました。事業も永続的に事業ができるように、個人事業から法人化し、社員の給与制度も見直すなど、様々な社内の環境整備も行いました。
しかし、様々な努力もむなしく、社員・パート・アルバイトが全員退職してしまい、自分一人だけになってしまいました。
さすがにこの時はショックだったそうで、経営指針書など作らなければよかったのではないかとも思われたそうです。
でも、吉武さんはめげずに経営指針書作りを続け、新しい社員・パート、アルバイトの方たちに経営指針書を見せて話し合い、全員で共有していきました。
その結果、新しい社員さんは、以前の社員さんたちよりも行動が積極的になり、経営上の課題や会社の方針にも、労使一丸となった経営が行えるようになりました。
そういった経営が行われたからか、以前よりも業績も向上しています。
吉武さんが経営指針書をつくるにあたって使用しているツールに、企業変革プログラムSTEP1(以下、STEP1)があります。
これは、中小企業家同友会全国協議会が作成したセルフアセスメントのツールです。
STEP1は、同友会で提唱する3つの目的、労使見解、21世紀型中小企業において書かれていることをもとに、経営指針書作り、社員共育、共同求人などの様々な活動や会員の経営実践などをまとめたものです。
吉武さんは、経営指針書作りにおいて、このSTEP1を大いに利用されています。
また経営者自身だけでなく社員さんにもつけてもらい、全社的に経営を検討しています。
このような全社的な自己点検が、経営指針書作りの内容をさらに深くさせているとのことでした。
私もSTEP1で経営をセルフアセスメントし、そこから経営指針書を作成していますが、実践はなかなか難しいと感じています。
計画を報告して全社的に共有し、それを基に実行してゆくと言うのは、難しいものです。
吉武さんは経営指針書を実践して、定着と効果が出るまで多くの苦労があったようです。しかし、それでもめげずに素直に現実をとらえ、改良し実践されていることに、感銘を受けました。
経営においては、素晴らしい業績をあげる経営者というのが時々現れ、我々はそういった方たちの経営に注目します。そして、「あの人だから出来るのであって、自分は違う」という風に、言ってしまうことが多いのではないでしょうか。
ですが、その方たちは本当に天才的なのかというと、違うと私は思っています。その方たちの話を聴いたり、記事や書籍を読んだりしますが、大抵多くの苦労をし、そして長く、粘り強く、地道に経営をしています。
そして、その積み重ねが成果として出ていることが多いようです。
私は報告を聴いて、吉武さんのように素直な心で経営に向き合い、諦めずに努力を続けることで経営を開いてゆきたいと思いました。
(記録 いちご会計事務所 足立 知弘)