同友会と会社経営の関係を『不離一体』、『車の両輪』と言い表している㈱お掃除でつくるやさしい未来の前田雅史氏
前回から私、岡本が同友会の皆様がどういう思いで経営指針書を作成されたのか、どういう変化があったのかをインタビューして、皆さんにお伝えしております。第2回目となる今回は、春日市で「お掃除を通して世代を超えて愛される街づくり」を目標に清掃サービス会社を運営されている前田雅史さんにお話をお聴きしました。
前田さんは2001年に同友会に入会されましたが積極的に同友会活動はされていませんでした。2008年から支部役員を引き受け、本格的に同友会活動を始め、今では同友会と会社経営は不離一体の関係であると気づかれました。経営指針書は2009年に初めてつくられました。その後、どのような変化が起きたのか話していただきました。それではどうぞ。
【指針書を作って感じた事】
明確に感じたことではないですが、自分自身の中に変化が出てきたと感じています。経営指針書を作成するということは、経営者自らのためであると、とても強く感じました。『ブレないために』『自分を律するために』役立つのだと感じました。
【指針書を作って変わった事】
ハウスクリーニングでは、ゴミは誰でも拾えます。でも、大事なのはどこの汚れをきれいにしたらいいのかを『察する力・感じる力(人間力)』を、指針書をつかってスタッフに伝えることができることです。人間の差別化をできることです。指針書に挿入したコラムを朝礼で読むことで、お掃除についての話を話せます。お掃除に対する考え方をスタッフと共有するのに指針書が役立っています。ブレずに話せるところが役立っています。
【指針書の存在感がメチャメチャある!】
私にとって経営指針書は、メチャメチャ存在感があるものになりました。今年も1月から5月までの5ヶ月間かかって作りました。こうして1冊ちゃんとしたのを作っているので、期の途中で短期的な経営戦略が変わっても、随時、その場で変更を書き加えているから、常に生きている経営指針書が手元にあることになります。1年ごとに段階的にグレードアップしていくのではなく、日ごとにグレードアップしているので、細かい修正を反映した最新の経営指針書が常に存在することになります。まさに生きた指針書です。
【会社に本は一冊あれば良い】
モキチアンドパートナーズ㈱の外山茂吉社長が「会社には本は1冊あれば良い」と言われました。そうだなと私もその言葉に共感しました。一冊の経営指針書に自分の大事な話である「言霊(ことだま)」や「因果の法則」等入れておくと、自分がブレないでいいです。
去年から今年にかけて、去年指針書に書いたことが具体化・実現化してることに気づきます。そうすると新たな目標を立てねばと思います。生きた指針書だから、その場で書き換えれば良い。書き込む習慣があるので、できたかどうかが判るのです。
【同友会と会社経営は不離一体の関係】
以前、同友会でワンシートセミナーをやっていました。A4用紙1枚の指針書を作りましょうという内容です。その時は、私は行ってませんが、指針書自体は大事だなとは感じていました。同友会に行くと、理念・方針・計画と言われますが、当時は大事だとは思いませんでした。というより、否定していました。成文化への拒絶感がありました。
これまでの経緯を年代を追ってお話しします。
1999年 | 創業 |
2001年~2005年 | 同友会には、入会したが幽霊会員であり、活動はせず、学びもありませんでした。 |
2006年(創業8年目頃) | 社員教育も重要視していませんでしたし、会社の状態は、言ってみればぐしゃぐしゃになっていました。そんなとき、当時中央支部副支部長だった大神さんが会社訪問してこられたのをきっかけに、同友会に復帰しました。それから時々例会に参加するようになり、労使関係とかいろいろ勉強しました。会社では派遣業を辞めて本業に絞りました。 |
2008年(10年目頃) | 中央支部副ブロック長・例会では担当を引き受ける・学びとしては「脱下請け」を決意。会社では同業者より管理職入社、女性社員入社といった動きがありました。指針書はぽろぽろと作り始めました。 |
2009年(11年目頃) | この年、私は転落事故により緊急入院しました。経営指針書をしっかり作るようになり、理念も成文化しました。この頃はまだ、指針書をつくることが自分の目的であって、スタッフに浸透させようとは思っていませんでした。 |
2010年~ | 中央支部副支部長・全国総会他参加(大分・山形・岡山・富山)・学びとしては地域に根ざした雇用体勢確立、子育て応援宣言、経営革新企業認定、会社では、「えがお巡回清掃」スタート、新規事業(チャイルドシート洗浄)スタート |
2012年~ | 中央支部支部長・県理事・福岡全研・宮崎総会参加。全県知る会報告者として参加。内閣府シンポジウム(報告者)。学びとしては数字をオープンに(経理公開)・社員参加で指針書作成・地域雇用(女性の活躍)。「step1」の継続的な勉強会を開催。会社はweb担当社員入社、パートナーシステム開始、業務拡張により事務所移転、社名変更(第2創業)、メディアから取材多数あり。 |
2013年 | 第1回経営指針書発表会を対外的に開催しました。社外の経営者仲間を呼んで50人くらいで、まどかぴあで行いました。発表会を開催したことは、社員にとって意識が大きかったと思います。経営者の指針書に対する熱意を感じてもらえたと思います。 |
2014年5月 | 今年は社内で第2回経営指針書発表会を行いました。このときスタッフの子供6人が来てたことが驚きであり、嬉しい出来事でした。社名を変えて第2創業「株式会社お掃除でつくるやさしい未来」のスタートとして、すばらしかったです。 |
年代を追っていくと同友会での活動に比例して会社経営も活発化していることが判ります。同友会と会社経営の関係を『不離一体』もしくは『車の両輪』と言い表しています。
不離一体シートを作り出した頃から、小さな変化がめまぐるしく起きました。同友会と指針書と会社の変革は比例しています。同友会に入って、来て、何かを思い、行動した人、それにもとづいて経営していく。そうすると、気付きがあり、経営が変革していくことは間違いないと思います。同友会に参加して活かすこと。経営指針書を作ることが変革につながっていることが、(私の経験を通して)事実としてあります。
【工夫したところ】
スタッフ全員に指針書を持ってもらっていますが、指針書には通し番号とスタッフ名が書いてあるので、大事にしてくれます。そして、指針書と出勤簿を一冊に綴じ込むことで毎日1回は見る習慣ができています。経営指針書の最初から20ページまで、掃除とは何かについて書きました。
【指針書を作成していない方へのメッセージ】
経営指針書を浸透させるのはずっと先のことでいいので、まずは、自らをブレないようにするために指針書を作るのがいいと思います。ある同友会の先輩が言われたことですが、『浸透させようと思っていたら、それは考えない方がいい。経営者が自ら指針書を作っていたら、考えていたら、自ずと浸透するよ。自分のための指針書が会社のための指針書になってくる。』
【編集後記】
経営指針書は、社員のために作るのだと位置づけてしまいがちですが、実際は社員のためより、経営者自身のためであると気づかされます。前田さんもその点を強く感じられていました。そして、経営者自身が指針書に真剣に向き合うことで、その姿がスタッフへ自然と伝わっていくのでしょうね。
前田さんの指針書で特徴的なところが、出勤簿も綴じ込んでいるところです。見開きで1ヶ月分のカレンダーが表示されて、右半分がコピーして提出できる出勤簿になっています。スタッフが毎日指針書にふれ合う工夫をされているのですね。
指針書のサイズはA5サイズ。約300ページもあります。指針書もですが、前田さんの思いのこもった話がコラムとして盛り込まれています。私、岡本も前田さんの指針書作成に製本担当として参加しましたが、次から次に送られてくる原稿にびっくりしました。どんどんページ数が増えて本当に一冊の本のようになってしまいました。今日、現在も、前田さんはお手持ちの経営指針書に実現した計画は消し込み、次の目標を加筆修正され、生きた経営指針書を育てていることだと思います。(岡本健一)
【参考リンク】
平成26年度 経営指針書完成報告の動画(2014/05/16)
平成25年度 経営指針書発表会 開催 (2013/6/15)